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2011年12月21日
3Dとなったサイバーフォーミュラは21世紀の映像として世界中の人々を熱狂させた--

新世紀GPXサイバーフォーミュラ 3Dのひみつ! この人に聞け!S3D監督:三田邦彦

みた◆くにひこ
株式会社キュー・テック
CGIプロデュースグループ マネージャー/S3D監督
『新世紀GPXサイバーフォーミュラ(3D版)』S3D監督
代表作に『劇場版 遊☆戯☆王 ~超融合! 時空を越えた絆~』『THE LAST MESSAGE 海猿』『ヒピラくん』など
--サイバーフォーミュラ3D化でのお仕事は?
今回の3D化は「2D3D変換」という技術を使っています。2Dの映像を元に、右目用と左目用の2つの映像からなる3D映像を作る技術です。
私の役職としてはS3D(ステレオスコピック3D)監督です。3D化するにあたって、ここはコレでOK、ここはこう直しましょう、ここはもっとこう見せよう、という判断をしていく役目でした。
--2D→3Dで大変なのは?
サイバーフォーミュラの3D化は、実はかなり挑戦的な内容だったんです。
20年前の作品であり、完成したフィルムの状態でしか素材がありませんでした。フィルムからHDリマスターしたので、画質には問題が少なかったんですが、コンポジット(一体化)された素材からの立体化は、実写を3D化するのと同じくらいの手間が掛かりました。
(※3D化を前提とした最近作では背景と人物等があらかじめ分けられた素材が用意される)
--難しい例としては?
画面に差し込む入射光が大変でした。実は「2D3D変換」は半透明なモノが苦手なんです。フィルム上では1枚の絵になっているモノを、背景とその手前にあるモノとして分けて、立体としての前後を付けなければならない。入射光に関しては技術的な部分と、どのような見え方をすれば違和感を感じないかという演出的な部分でも気を遣いました。
また、サイバーフォーミュラではマシンが出す火花(スパーク)のエフェクトにも気を遣いました。火花を綺麗に見せる事が3Dの効果が上がるポイントだと思ったからです。
その中でも特に、福田監督からの要望にあった、地面ギリギリの高さにあるカメラ位置では、パースを効かせた迫力ある絵作りをしてほしいという事には注意しました。
3Dでは複雑な形状が大変なのはもちろんですが、手前から奥へと続いていくような構造物、広い観客席や、なによりサーキットが大変なんです。地面とそこにあるモノとの接地面の調節ですね。手前に設定しすぎると地面から浮いて見えるし、逆に奥過ぎると地面にめり込んでいるように見えてしまう。
そんな違和感を感じさせないようにするのが、実はいちばん気を遣う部分なんです。
--なぜ飛び出して見えるのか?
人間は普段、左右の目で物を見ていますよね。これは左右の目から2つの映像が同時に脳に届いてる状態です。そして、片目ずつ見ると分かると思いますが、左右で見え方が違いますよね。ものの位置がずれて見えると思います。このずれを「視差」と言って、2つの映像の視差を脳は「距離」として認識するんです。
これと同じように、左右の目に「視差」のある映像を個別に見せることで、脳はそれを立体的に見ることが出来る、という仕組みです。
昔は赤青メガネ(アナグリフ方式)でしたが、今は偏光フィルターや液晶シャッターを使った方法に変わっています。でも、左右の映像を個別に見せる、という仕掛けが変わっただけで、立体映像の原理は昔から変わりません。
--具体的な作業内容は?
2Dから3Dを作る作業ですから、まず元の映像の構図や演出意図から「どんな空間を作るか?」を設計します。
それを基に、奥行き方向に距離を持たせたい部分を切り分けます。こうして2Dの映像をレイヤー化して、それぞれを左右にずらして視差を作れば、一応立体的には見えるんです。ただ、このままだと学芸会の「書き割り」の様な、板が並んでいる様にみえてしまいます。個々に立体感が無いんですね。
そこで「デプスマップ」というものを作ります。「デプスマップ」は、黒い霧の中に白い物が置いてある様な画像データです。空間の一番奥が黒、一番手間が白、その間は距離に応じてグレーの色を決めて作ります。元の画像と、このデプスマップを組み合わせると、顔の丸みや地面の傾き、車体の造形などを作る事が出来るわけです。
これらの工程は一部自動化してる部分もあるのですが、基本的には手作業です。特に立体感については、やはり人間が判断しないと自然に見える3Dは作れませんね。
--3D化における「演出」
2Dの絵から3Dを作る技術なので、自由に立体感を作れる反面、おかしな立体感も作れてしまうわけです。そのため「どんな空間を作るか」という初めの設計が非常に重要になんです。そのためには、顔の造形、人の立体感、椅子の大きさや部屋の大きさなど、自然な立体感、空間感を理解しておくことが必要だと思います。
また、そのカットのレイアウトやレンズ効果などによる「演出意図」を理解して、そのカットをどう立体として演出していくか、リアリティーとデフォルメのバランスをどう取るか、そういう意識がとても重要だと考えます。
2D3D変換という技術ではありますが「3D再構築」と言った方が正しいと思います。
レースの中継などでよく見る「望遠レンズ」の映像がありますよね。サイバーフォーミュラでも沢山出てきますが、本来望遠レンズで撮影した3D映像って立体感が無いんです。人間も、遠くの物って立体感をほとんど感じないですよね。でも、そういった物理的に正しい立体感を作っても、そこだけ物足りないカットが出来ることになります。だから「演出」をして、立体感を付けるんです。自然に見える立体感というには、必ずしも正しい立体感では無いと思っています。
--ここが3D注目ポイント!
今回は約25名のクルーで約三週間の作業になったんですが、彼等のテンションが高くて、最初の段階から完成度の高い絵が出来てきたんです。その中でもOPで主人公ハヤトのヘルメットのバイザーに映り込んだ光が動いていく場面などが良く出来たシーンだと思います。ヘルメットの奥にドライバーの目元が有り、ヘルメットの厚みがあってバイザー、そして光という場面です。
その他にもOPでは、ランドルが登場してグリッドの地面にイシュザークが奥から走り込んでくる映像など、「ああ、オレたちここまで出来るようになったんだ」と感動したほどです(笑)。正直、一枚のフィルムを元にして3Dを作ったとは思えませんよ。チェックの時にチーフオペレーターの近君が「今回はおかしいくらいやってますよ」と言ってきましたから(笑)。
チームにとっては良い経験になったと思います。完成したフィルムからの3D化ということで難易度が高い作業だったんですが、これが出来た事で、この先どんなモノが来ても3D化する出来るという自信に繋がりました。
今回の作業に関しては、どうやって作業を効率化するかを練っていたんですが、それが成功したと思います。今後はそれをもっと効率化していくのが課題ですね。
--3D化の作業を終えて
私は放映当時は大学生だったんですけれど、まさか自分が3D化に関わるとは思っていませんでした。今回、作業するにあたって36、37話を観たんですが、その「熱さ」と「面白さ」を実感しました。それぞれの場面を繋いで観た時に、ドラマの盛り上がりに、3Dに関わったスタッフたちの顔がダブって、熱いモノがこみ上げてきました。こういう作品の3D化に関われて幸せだと思いましたね。